2022年7月19日(火)
遺産分割協議自体に時効はないが・・・
1 遺産分割協議自体には時効はない
今のところ、遺産分割協議を行うのに制限はなく、相続が発生した後であれば、いつまででも遺産分割協議を行うことができます。
しかし、時間制限がないので、長年放っておいて、二次相続や三次相続などが発生して、相続人が多数になってわからなくなってしまい、収拾がつかなくなることなどの弊害があります。
ほかにも、長年放っておくと、遺産を構成する権利が債権であった場合などは時効消滅しますし、相続税がかかる場合なども問題があるので、遺産分割を早くやるにこしたことはありません。
そこで、以前から、遺産分割協議に締め切りを設けようという話がありますが、現時点ではまだ実現していません。
2 遺産分割に、部分的な時間制限ができました
ところが、令和3年民法改正で、遺産分割協議それ自体の時間制限ではありませんが、遺産分割の際に寄与分・特別受益が主張できなくなる時間的な限界が設けられました(施行日令和5年4月1日)。
特別受益とは、法定相続分をそのままあてはめて分割するには不公平な場合、例えば一人の相続人だけ不動産の生前贈与を受けていた場合など、これを遺産分割時に考慮するものです。
この場合であれば、生前贈与を受けていた相続人の取得分が少なくなります。反対に、被相続人の財産の増加や維持に努めたものは法定相続分以上の持ち分をもらうべきなので、これを寄与分といいます。
このように法定相続分に一定の修正を加えた後の相続分のことを「具体的相続分」と言いますが、今回、この具体的相続分を請求する期間を制限する改正法が成立しました。
民法904条の3(経過措置として改正法付則3)により、相続開始時から10年を経過した後にする遺産分割は,原則として具体的相続分の請求ができなくなり、法定相続分でしか分けることができません。
もっとも、その前に家庭裁判所に遺産分割請求をした場合や相続人全員が具体的相続分での遺産分割に同意した場合などは、例外的に可能となります。
施行日は、令和5年4月1日ですが、施行日以前の相続発生の場合でも効力が及びますので、今後は、特別受益や寄与分のことを考えるのであれば、期間制限を意識し、速やかに遺産分割協議を行う必要があります。
以上