2019年2月26日(火)
義父母の介護~相続人以外の者の貢献
1 改正前
被相続人が亡くなった場合,その遺産を相続するのは相続人であり,相続人でないものは,その遺産を相続することはありませんでした。このこと自体は当然のように思われます。
ただそうすると,例えば,被相続人の介護など全くしていなかった二男や三男は,相続人として遺産を相続できるのに対し,被相続人が亡くなるまで一人で介護を尽くした長男の妻は,一切遺産を相続できないことになります。
不公平な気がしませんか?この点,夫である長男が生存していれば,長男が遺産を相続できるからいいじゃないか,と思われるかもしれません。しかし,被相続人が亡くなったとき,すでに長男も亡くなっていて,しかも,子どももいなければ,長男の妻は,本当に何ももらえないことになります。
そもそも,被相続人の介護を尽くしてきた長男の妻は,被相続人に対し多大な貢献をしています。これを全く考慮せず,相続人でないから遺産を取得できませんと,一律に排除するのは,やはり不公平ですよね。
2 改正後~特別の寄与
そこで,改正法は,相続人以外の親族が,被相続人の療養看護等を行った場合,一定の要件のもとで,相続人に対して金銭の支払いを請求することができる。としました(特別の寄与)。この制度によって,長男の妻の介護等の貢献に報いることができ,実質的公平が図られることになります。
もっとも,相続人になるわけではありませんし,遺産分割の手続きが複雑となっても困りますので,遺産分割は,これまでどおり相続人だけで行うこととしつつ,相続人に対する金銭請求を認めることとしています。
金銭の請求をできるのは,「被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした相続人以外の親族(特別寄与者)」であり,寄与に応じた額の金銭の支払いを請求できます。
当事者間で協議が整わなかったときは,家庭裁判所に協議に代わる処分(審判)を求めることができますが,相続の開始及び相続人を知った時から6か月以内、又は相続開始の時から1年以内という期間制限があります。