2018年8月10日(金)
後見人は伸び悩み
1 平成29年度成年後見関係事件の概況
成年後見の申立てなどについて裁判所が統計を取っており,後見制度がどのように利用されているかがわかります。
2 後見人は伸び悩み
ここ5年の間,成年後見関係事件(後見・保佐・補助・任意後見監督人申立て)は3万5000件付近を推移しており,平成29年は平成28年よりは少し増えたものの,殆ど変わりません。
高齢者が増え,認知症の患者も増えていることからすると,これほど伸び悩んでいるのは,同制度が選ばれていない,人気がないということかもしれません。
その理由は,ひとつは後見人の横領事件などの報道から悪いイメージが定着していることがあるでしょう。
また,家族信託の雑誌記事や講演などにより,後見制度のデメリット(硬直的な財産管理しかできないなど)が強く主張されるようになってきたこともあるでしょう。
3 親族後見人は少ない
家族等が成年後見人に選任された割合は約26.2%となっています。専門職後見人の中では司法書士が一番多いようです。
4 申立の動機は,預貯金等の管理・解約が多い
主な申立ての動機としては,預貯金等の管理・解約が圧倒的に多く約半分くらいの割合です。次に身上監護です。これらから大分割合が落ちて,介護保険契約,不動産の処分,相続手続があります。
多くは家族が本人の定期預金等を引き出そうとして,引き出せなかった場合に,銀行などから後見人を選任するように言われ,申立てをするものと思われます。
その場合,家族は,後見人をつける意味や効果をよく理解してから選任申立をする必要があります。そうでなければ,こんな筈ではなかったと,思うかもしれません。
5 後見制度の改良が必要
後見人制度は,判断能力が衰えた本人を守る制度として,必要不可欠の制度になっています。確かに,利用者の伸び悩みはありますが,家族信託がこれに代替するというわけでもなく,どうしても後見制度が必要な場合もあります。この制度をより良いものにしていく必要があります。
また、後見制度がどのようなものかまだ十分に知られているとはいえないので,きちんと周知していく必要があります。