2018年3月8日(木)
家族信託の機能1・権限移転
家族信託の3つの機能
家族信託(民事信託)といっても,普段馴染みがないことから,どのようなものかよくわからない方が多いと思います。
そこで,3回に分けて,信託の性質・機能という側面から,解説いたします。
信託の機能としては,様々なものがあり,分類については諸説ありますが,大事なのは次の3点です。
(1)信託財産の権限が受託者に移転する
(2)信託財産の所有権が受益権という債権に変化する
(3)信託財産が委託者意思に長期間拘束される
今回は(1)についてです。
家族信託の機能(1)信託財産の権限が受託者に移転する
信託は,財産の管理権限を委託者から受託者に移転させるものです。
不思議なのは,その財産の所有者がいなくなる,という点です。
信託財産は,受託者が管理することになり,その財産の「所有者」は居なくなります。
すなわち,信託によって,信託財産は,誰のものでもないかのような状態が生じます。
これは,民法の所有権の概念に親しんでいる我々からは,ちょっとわかりづらい考え方です。
例えば,不動産を信託財産にした場合,不動産の名義は,受託者に移転することになります(なお登記事項証明書には「信託」による移転登記であることなどが明記されます)。
しかし,だからといって,その不動産が受託者のものになるわけではありません。同様に,委託者のものでも,受益者のものでもありません。
ですので,委託者や受託者が亡くなっても,その不動産は相続の対象にはなりません。また,委託者や受託者が破産しても,原則として,その不動産に影響が及ぶことはありません。
信託は,このような権限移転という機能を持ち,所有者がいなくなり,信託財産になる,という性質をもっているのです。