2017年11月12日(日)
親の財産を守る家族信託(民事信託)
1 信託の典型的な利用法:親の財産を守る
家族信託(民事信託)の特徴をひとことでいうと、「財産の持ち主(通常は親)が、家族を信頼して、財産を託する」ことです。
一番わかりやすい例は、高齢になり、財産の管理などに不安を感じた親が、子供に自分の不動産や預金を信じて託する、というものです。
そして財産を託された子供から親に対し、生活費を支給する、という形になります。
生前贈与と異なり、財産は親から子に移るのではなく、「信託財産」というものになり、子の所有になるわけではありません。
だから、親としても、勝手に使われたりとか、生活費をくれなくなってしまったらどうしよう、といった不安を免れます。
このタイプの信託の目的は、親自身のために、財産の管理を子にうつし、安全・安心な生活を支える、というものになります。
例えば、振り込め詐欺についていえば、預金口座自体が親のものではなくなり、子に移っているので、間違って振り込んでしまう心配がなくなります。
また、認知症の発症や、亡くなった時などに、資産が凍結されてしまう場合がありますが、そのようなときでも、同様に、子が必要な費用を支払うことが可能になります。
リスクとしては、信じて託した子が、勝手にお金を使ってしまうことなどがあり得ます。
この場合は、財産ごとに管理者を分けることや、信託監督人をつけるなど、客観的な第三者のチェックを入れる仕組みをつくることで、予防することができます。
2 信託は契約です
なお、信託は通常は、契約で行われます。
契約とは、二人の当事者の間で、意思を合致させることです。
したがって、この場合は、委託する親と、託される子どもとの間に、どのような契約であり、どのような効果が生ずるのか、を十分に理解する必要があります。
契約の内容は法律の範囲内ではありますが、かなり自由が利くので、どのように財産を託するのか、きめ細かく設計することができます。
同時に、委託者が高齢である場合、その内容をきちんと理解する必要があります。
信託契約によってトラブルが発生してしまっては、元も子もありませんので、関係者全てが良く理解し、真に合意することができるように努めなければなりません。
(関口)