2017年9月15日(金)
相続放棄はしたけれど・・・
多額の借金を残して亡くなった場合,その借金も相続の対象になります。
この点,遺産の中に借金の額を超える預貯金などがあればともかく,借金しか残っていないという場合,相続人がその借金を免れるためには。相続放棄をする必要があります。
このように残された借金を免れるために相続放棄をするという事例は結構多いです。
では,借金ではなくて,不動産のみが遺産として残った場合はどうでしょうか。
財産的価値がある不動産であれば,相続人の誰かかが取得するなり,売却するなりできるでしょうが,山奥の山林だったり,しばらく誰も住んでいない空き家だったら?
おそらく財産的価値などないでしょうし,空き家などは解体費用などでかえって赤字となりかねません。
そこでどうするか?
そうだ,相続放棄があるじゃないか,と思った方,事はそう簡単ではありません。
民法940条を見ると,「相続の放棄をした者は,その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで,自己の財産におけるのと同一の注意をもって,その財産の管理を継続しなければならない。」とあります。
つまり,相続放棄をしたとしても,次順位の相続人が遺産の管理を始めるまでは,管理を継続しなければならないし,次順位の相続人がいなければ,管理を継続し続けなければならず,管理を怠ったために何らかの損害を与えた場合,管理義務違反を問われ損害賠償責任を負わされることもありえます。
しかし,相続放棄した遺産を管理し続けるのは,あまりに多大な負担だし,現実に管理できないという場合もあるかと思います。
どうしても管理義務を免れたければ,裁判所に相続財産管理人選任の申立てをし,選任された管理人に財産管理を引き継ぐ必要がありますが,申立費用や予納金(数十万円~)を自分で用意しなければなりません。
いずれにしても悩ましい問題ですね・・・
(小林)