2017年8月22日(火)
家族信託のすすめ
先日、ファイナンシャルプランナーの勉強会で、遠藤家族信託法律事務所を主宰する遠藤英嗣先生をお招きし、「FPが知っておく家族信託の仕組み」という題名で家族信託の講義をしていただきました。
家族信託(民事信託、民事家族信託等ともいいます)については、こちらで述べたことがあります。
一言でいうと、高齢者の財産管理などを、信頼のおける家族に信託する、という制度です。
家族に対して高齢者の財産管理や遺産の承継についての既存の制度、すなわち、成年後見制度や遺言制度などの限界を意識し、信託法を用いることで、ご本人、家族の希望に添った財産の管理・承継を目指すものです。
新しい財産管理制度として、最近とくに注目されています。
遠藤先生はこの分野を10年ほど前から研究されており、多くの家族信託契約を実際に経験し、著書も出版されるなど、たいへん造詣が深い方です。
貴重な経験や様々な事例をお話しいただき、たいへん興味深い講義でした。
家族のための民事信託の大事なところは、家族のため、という目的を忘れない事であり、信託の基本的部分である資産の管理・活用運用・承継、運用益等の給付だけでなく、身上監護も含めて、あらゆる制度を総合的に考慮すべきとのことでした。
成年後見制度と遺言制度だけでは、不十分であり、信託や任意後見契約等の活用も視野に入れないと、これからは高齢者の方の資産管理のニーズに応えていけません。
たとえば、成年後見人制度は、申請者が親族後見人を希望して後見人候補者として申請しても、希望通りにいかない、という大きなデメリットがあります。
任意後見契約は、この点を回避し、自分の意思で任意後見人を選任できること、会社の役員の資格をはく奪されないこと、などのメリットがあります。
このようなメリットを意識して、信託契約と合わせることで、当事者のニーズに応えることができます。
意思能力がまだ不十分ではない段階であれば、多くの選択肢があり、希望の財産管理・承継方法が選ぶことができます。
老後の安心を得たいと考えている方、既存の後見制度や遺言制度には不満を持っている方は、多くいらっしゃいます。
今後は、相続分野に精通している弁護士が、信託を使って、より使い勝手の良い制度を提案できるように、ならなければいけません。
これからも、信託分野の研究を深め、皆様のお役に立てるよう、情報提供を続けていきます。
(関口)