2017年6月20日(火)
介護施設が特別縁故者になる場合
1 特別縁故者とは
「特別縁故者」については、以前ご説明しました。
特別縁故者となり得る者は、以下の3つの場合があります。
(1)被相続人と生計を同じくしていた者
内縁の妻や、事実上の養親子関係にある者、長年同居して生活していた者(例えば相続人にあたらない親族関係にある者)などがあたります。
(2)被相続人の療養看護に努めた者
報酬を受けていた看護師・家政婦などは認められませんが、業務以外に日常の介護や世話、入退院手続など、対価以上に献身的に被相続人の療養看護を尽くしていた場合は、認められる場合もあります。
(3)その他被相続人と特別の縁故があった者
友人・知人で介護を続けていた者など、密接な交流が続いていた者などが考えられます。
2 法人が特別縁故者となる場合
これについても、以前説明したとおり、自然人だけでなく、町などの地方公共団体、学校法人、宗教法人、公益法人・社会福祉法人、法人格なき社団・財団や民法上の組合など、法人や団体も特別縁故者となることがあります。
例として、介護施設が長期間無償で被相続人の身の回りの世話をし、被相続人から亡くなったら施設に財産を渡したいと言われていた場合などがありました。
3 介護施設が特別縁故者に当たるとされた事例
介護施設が特別縁故者に当たるとされた事例があります(高松高裁決定平成26年9月5日)
この事例は、重度の障碍者となり、全介助が必要となった被相続人(Aといいます)が、施設に入所し、約6年間の間、日常的に全的な介護や介助などを受けて生活していたものです。介護施設側は、レクリエーションや買い物に連れ出すほか、Aの親族の葬儀等の手続きに便宜を図るなど献身的な介護を続けていました。
この件では,Aが本件施設の入居料を支払っていたことが問題となりました。
上記のように,この施設は、(2)被相続人の療養看護に努めた者にあたりますが、施設利用料を受け取っていたため、対価関係があるようにもみえるからです。
原審では、入居費用と施設のサービスとの間に対価関係があるとして,特別縁故者に当たらないとしました。
しかし,この決定は,両者が対価関係にあたらないとして特別縁故者と認めました。また仮に対価関係が認められるとしてもそれだけで特別縁故者に当たらないと判断するのは相当ではない、などとしました。
後者については、その理由が不明との意見もあります。
しかし、本件は預金が1890万円程度であり、国庫に納める場合の負担費用のことも考えると、結論としては妥当であるようです(本山敦 介護施設が特別縁故者に当たるとされた事例 金融・商事判例No1486 116頁)。
せっかく遺産があっても、相続する者がいない場合は、その処理が複雑になってしまいます。
国庫に納める場合も、相続財産管理人選任申立・特別縁故者に対する財産分与申立を行うのも、たいへんな時間と労力、費用がかかります。
今後、相続人が居ない方が施設で亡くなることも増えると思われます。
特別縁故者制度の改善も含め、何らかの制度的な対応が必要だと思います。
(関口)