2017年5月29日(月)
遺産分割協議と特別代理人
1.遺産分割協議と特別代理人
相続が発生した場合、遺産の分配方法を相続人の間で話し合う必要がありますが、その相続人の中に未成年者がいる場合には、特別な配慮が必要になってきます。これが特別代理人の選任という話です。
具体的には、民法上、親権者である父又は母が、その子との間でお互いに利益が相反する行為(=利益相反行為)をするには、子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならないこととされています(民法826条1項)。
そこで、親権者と未成年者が共に共同相続人であり、親権者が未成年者の代理人としても遺産分割協議を行う場合には、親権者と子において利益が相反するので、特別代理人の選任が必要になります。
また、親権者を同じくする複数の未成年者がいて、当該親権者がそれぞれの未成年者の代理人として遺産分割協議を行う場合も、その一人の子と他の子との利益が相反するので、特別代理人の選任が必要になります(民法826条2項)。
特別代理人の選任を要する場合には、子の住所地を管轄する家庭裁判所に、特別代理人の選任を請求しなければなりません。
このように未成年者が相続人になる場合には、特別代理人の選任を要するのではないかという配慮が必要です。
もし、利益相反行為であるにもかかわらず、特別代理人を選ばず、親権者がみずから代理行為をした場合は無権代理行為となり、子が成年に達した後で追認しなければ、その行為の効力は本人に及びません。
2.具体例
例えば、父Aが死亡し、母Bと未成年者の子Cが共同相続人の場合を考えてみます。この場合、本来は、Cの法定代理人であるBが、未成年者の子に変わって遺産分割協議を行うことになるはずです(民法824条)。
しかしながら、BとCは、父の相続に関して、利益が相反する関係にあるので、BがCを代理して行う遺産分割協議は、利益相反行為にあたることになります。そのため、この場合、特別代理人の選任を要することになるわけです。
それにもかかわらず、特別代理人を選任せずに遺産分割協議をすると、そのCが成年に達した後、追認しない限りは、遺産分割協議の効力はCに及びません。
後々の紛争を防ぐためにも、遺産分割協議の有効性には、配慮が必要です。
(勝本)