2017年3月29日(水)
遺言の撤回①(法定撤回)
1.遺言の撤回(法定撤回)
遺言者は、生前であれば、いつでも遺言の撤回をすることができます。
もっとも、遺言者の撤回の意思表示がなされていなくても、一定の事実があったときには、遺言の撤回があったものと扱われます(民法1023条、1024条)。これを法定撤回というのですが、法定撤回には、以下の4つの類型が存在します。
1.前の遺言と内容の抵触する遺言がされた場合には、抵触する部分について前の遺言を撤回したものとみなす(民法1023条1項)
2.遺言と抵触する生前処分がされた場合には、抵触する部分について遺言を撤回したものとみなす(民法1023条2項)
3.遺言者が故意に遺言者を破棄した場合には、破棄した部分について遺言を撤回したものとみなす(民法1024条前段)
4.遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄した場合には、破棄した部分について遺言を撤回したものとみなす(民法1024条後段)
このような場合には、遺言があったとしても、撤回したものとみなされることになります。
この中で、今回は、「2.遺言と抵触する生前処分がされた場合」について、具体例に基づき、ご説明しようと思います。
例えば、「甲建物は子であるBに遺贈する」という遺言書をAさんが残していたとします。
その場合、遺言書が有効であれば、甲建物はBさんが取得することになります。
しかしながら、仮に、その遺言書が作成されてから、Aさんが甲建物を友人Cさんに贈与してしまっていた場合、Bさんは甲建物を取得することができません。
なぜなら、Aさんが甲建物をCさんに贈与するという行為は、上記遺言と抵触していますから、民法1023条2項によって、上記遺言は無効になってしまうからです。
遺言者であるAさんの意思としても、遺言書を作成した後にCに対して贈与をしたということは、甲建物はBさんではなくCさんに贈与したいというのが最終的な意思と思われるので、その意思を尊重することにもなります。
以上が、法定撤回が問題となる具体例の一つになります。
2.遺言書を発見した際には・・・
上記のように遺言書が存在していたとしても、必ずしもその内容が実現されるとは限りません。
撤回が認められる場合もありますし、その他にも、方式不備によって無効となる場合、無効事由(認知症等による遺言能力の欠如等)・取消事由(錯誤や詐欺)が存在する場合もあります。
したがいまして、遺言書が発見された際には、遺言の撤回がないか、方式不備がないか、無効・取消事由がないか等をチェックしておく必要があるでしょう。
(勝本)