2016年11月7日(月)
相続放棄~おいっこ・めいっこの場合
例えば,あなたの叔父が多額の借金を残して亡くなったとします。ただ,甥であるあなたは,叔父とは疎遠となっており,もう何年も会うことはおろか連絡すら取っていません。
ところが,あなた宛てに叔父の債権者と名乗る貸金業者から借金の督促状が届きました。
どういうことでしょう?
それはあなたが叔父の相続人となったからだと考えられます。
人が亡くなると相続が開始しますが,常に相続人となる配偶者は別として,他の法定相続人については,①子②親(直系尊属)③兄弟姉妹の順番で順位がつけられ,先順位の相続人がいる限り,後順位者は相続人になることはありません。
したがって,子がいる限り親は,親がいる限り兄弟姉妹は相続人となることはないのです。
ではどうして,甥であるあなたが相続人となったのでしょう?
まず,叔父にはそもそも子どもがいない,またはすでに亡くなっている場合で,叔父の両親もすでに亡くなっている場合を考えてみます。この場合は兄弟姉妹が相続人となりますが,そのうちの一人がすでに亡くなっていて,それがあなたの親であったらどうでしょうか?
本来,兄弟姉妹の子である甥や姪は,相続人とはならないのですが,相続開始前に兄弟姉妹が亡くなっていた場合はその子である甥や姪が相続人となります。代襲相続という制度ですが,これによりあなたは相続人となるのです。
また,叔父が亡くなり相続が開始されたが,子も親も相続放棄をした場合を考えてみます。この場合も兄弟姉妹が相続人となりますが,この段階ですでにあなたの親が亡くなっていれば,あなたは代襲相続により相続人となります。
したがって,以上の場合あなたは,相続放棄をするか否かを選択しなければなりません。
では,子も親も相続放棄をして,兄弟姉妹が相続人となったが,あなたの親も相続放棄をした場合,あなたは相続人なのでしょうか?
この場合も代襲相続が発生しそうですが,相続放棄をすると,あなたの親はそもそも相続人ではなくなります。したがって,その子であるあなたも相続人とはなりえません。相続放棄の場合は,代襲相続が発生しないのです。
要するに,叔父より先にあなたの親が亡くなっていた場合は,あなたも叔父の相続人となる可能性があります。とくに多額の借金のみを残して叔父が亡くなったような場合は,あなたの知らない間に多額の借金を背負わされることにもなりかねませんので,気をつけてください。心配であれば弁護士に相談することも検討しましょう。
(小林)