2016年10月27日(木)
相続人が遠隔地にいるとき
1 遺産分割調停って?
相続が起こったとき、まずは、当事者同士で話し合いをして、遺産の分け方を決めることになるかと思います。
しかしながら、当事者同士でなかなか話し合いまとまらない場合も少なくないと思います。その場合、一つの手段として、調停を申し立てるという方法が考えられます。
調停とは、親族などの間の揉め事について、家事審判官(裁判官)と民間から選ばれた調停委員が間に入り、非公開の場で、それぞれから言い分を聴きながら、話し合いによって適切で妥当な解決を目指す手続きのことをいいます。
経験豊富な調停委員が当事者の間に入ることで、当事者同士の話し合いに比べ、円滑な話し合いを見込むことができるというわけです。
この話し合いは、家庭裁判所と呼ばれる場所で行われるのですが、原則として、相手方の住所地の家庭裁判所で行われることになります。
例えば、調停を申し立てたいと思っている相続人が川崎に住んでいたとしても、相手方となる相続人の住所地が大阪市である場合、調停は大阪家庭裁判所で行われることになります。
調停が1回で済むのであればまだいいですが、通常、調停は複数回に渡って行われることになります。相手方の住所地が遠ければ遠いだけ、交通費もかかりますし、時間もかかってしまいます。また、調停は平日に行われますので、平日に仕事があれば、仕事を休まなければなりません。
このように、調停においては、遠隔地に住む相続人の負担が過大となってしまいます。そこで、このような負担を軽減すべく電話会議システムが導入されました。
2 電話会議システムって?
当事者が遠隔の地に居住しているときその他相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、家庭裁判所を及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をする方法(=電話会議システム)によって、調停期日における手続きを行うことができるようになりました。つまり、遠隔地に住む当事者が家庭裁判所に行かなくて済むというわけです。例えば、弁護士が代理人として付いている場合、弁護士の事務所から裁判所に電話をして、話し合いをする形になります。
しかしながら、このシステムが導入されてから間がないということで、少なくとも1回は出頭を求めるなど裁判所によって運用が異なるようです。したがって、調停を申し立てるときには、事前に裁判所の運用を確認しておくことが望ましいでしょう。
また、電話会議システムは、出頭の負担を回避できるというメリットがある一方で、調停委員の顔色や調停の雰囲気などがわかりにくいというデメリットが存在することにも注意です。
このようなデメリットがあるとはいえ、基本的には、遠隔地に住む当事者にとっては、大幅に負担が減少する有意義な制度であることは間違いないので、有効活用したいものですね。
(勝本)