2016年1月16日(土)
相続権を奪うには?
あなたの財産は,あなたのものですから,売ろうが,貸そうが,使おうが基本的には自由です。
したがって,生きている今であれば,自分の意思で自由に財産の処分をすることができます。
しかし,亡くなってしまったらそうはいきません。
人が亡くなると相続が開始しますが,相続人となる人は法律で決められています(法定相続人)。
そうすると,あなたが何もしないまま亡くなってしまうと,あなたの財産は法定相続人間で法定相続分に従って分割されるのが原則となります。
あなたとしては,法定相続人の中に遺産をあげたくない人がいたかもしれませんが,仕方ありません。
このように法定相続人の中に遺産をあげたくない人がいた場合は,その法定相続人を外した遺言を書いておく必要があります。
ところが,法定相続人のうち兄弟姉妹以外には遺留分があります。よって,兄弟姉妹が法定相続人の場合は,遺言によって相続から外すことはできますが,子どもや配偶者(夫,妻)の場合は,完全に外すことはできません。
では,子どもや配偶者に遺産をあげたくない場合,何も方法がないのでしょうか?
この点,民法には,将来,相続人となりうべき人(推定相続人)の相続権をはく奪する制度があります。「相続欠格」(民法891条)と「廃除」(民法892条,893条)です。
2つの制度の違いとして,「相続欠格」は,推定相続人は法律上当然にその資格を失うのに対し,「廃除」は遺言者の意思で,推定相続人の相続権をはく奪する制度であるという点にあります。
そして,「廃除」は,①推定相続人が,被相続人に対し,虐待,もしくは重大な侮辱を加えたときや,その他の著しい非行があった場合に②家庭裁判所に調停や審判の申立をするという方法で行います。
その他,「廃除」は遺言ですることも可能です。ただし,この場合も家庭裁判所への申立が必要であり,この申立は遺言執行者しかできませんので,遺言で「廃除」をする場合は,遺言執行者も選任することをお忘れなく。
(小林)