2015年12月4日(金)
任意後見契約の活用
任意後見契約
ご本人やご家族の認知症が進んできた、という場合に、任意後見契約(にんいこうけんけいやく)という制度を使うことができます。
認知症が進んでしまうと、たとえば介護や医療に必要な契約や手続ができなくなったり、銀行からお金を引き出すことができなくなったりします。
また、いろいろな支払いや収入を管理できない、あるいは悪い人に騙されてお金を失う可能性がある、といった問題が生じます。
本人に判断能力がないと、委任状を作成することもできなくなるので、委任を受けて誰かが代わりにするということもできません。
このような状況を避けるために、誰かが本人に代わって、本人のために、財産管理などについてさまざまな意思決定をし、必要な法的な手続をする必要があります。
このように本人に代わって、本人のために、財産管理などのさまざまな重要な意思決定・法的な手続をする人を後見人(こうけんにん)といいます。
任意後見契約とは、本人が契約の締結に必要な判断能力を有している間に、将来判断能力が不十分になったときに備えて、財産管理などの後見事務の内容と後見人候補者を、決めておく契約です。
任意後見の流れ
なお、任意後見契約は公正証書で作らないといけないので、公証役場に行くことになります。
契約してから認知症が進行して、判断能力がなくなってしまった段階で、この契約を前提に、家庭裁判所に任意後見監督人選任申立を行います。
家庭裁判所が、任意後見人を監督する任意後見監督人を選任すると、任意後見が始まります。
なお、任意後見契約においては、誰を任意後見人にするか、どこまでの後見事務を委任するかは自由に決めることができます。
法定後見(任意後見人の契約をしないまま、認知症等になった場合、裁判所に後見人選任を申し立てます)の場合は、裁判所が後見人を決めることになります。
これと比較すれば、任意後見契約においては、後見人を選べるということは、ひとつのメリットといえるでしょう。
財産管理等契約
なお、任意後見が始まる前に、身体が不自由になったり、認知症が一進一退の場合など、やはり、本人だけだと財産管理がスムーズに行かない、という問題が生じます。
このような場合は、任意後見契約と同時に、財産管理等の委任契約を結び、対処することが可能です。
契約時から任意後見が始まるまでは、財産管理等の委任契約により、委任を受けた受任者が財産管理等の手伝い・代理を行います。
判断能力がなくなってしまい任意後見が始まったら、任意後見契約により、任意後見人が後見事務をすることになります。
任意後見契約と、財産管理等契約を併用することで、長期に渡り本人の財産をより安全に守ろうとするものです。
いずれにせよ、大切な財産の管理を任せることになるので、コストがどのくらいかかるのかという点と、信用できる任意後見人を選ぶことが重要になります。
(関口)