2015年5月8日(金)
信託を使えば、多様な財産管理・処分が可能になります
急速に進む高齢化を背景に、いま、「信託」に感心が高まっています。
信託とはいったいどのようなものなのでしょうか?
「信託」とは、信頼のおける人に自分の財産を託し、その財産の管理・処分を任せる仕組みをいいます。
財産を託す人を「委託者」(いたくしゃ)、託される人を「受託者」(じゅたくしゃ)、財産から利益を受ける人を「受益者」(じゅえきしゃ)といいます。
「民事信託」という言葉があり、これは信託銀行が行う商取引としての「商事信託」との対比で使われます。私達弁護士が関わるのは、この民事信託です。家族信託、福祉(型)信託、という言葉も使われています。
高齢者の財産管理や遺産の承継については、成年後見制度、任意後見制度、遺言という制度によるのが一般的ですが、これらの制度は、限界もあります。
近年、信託法が改正され、これらの後見や遺言に代えて、あるいは後見や遺言とあわせて信託を利用することで、ご本人の希望に添った財産の管理・承継をすることが可能になりました。
「信託」を使えば、より自由で使い勝手の良い財産管理・承継が可能になります。しかし、その分、財産管理等が適切に行われるような監督をしっかりする必要があります。
例えば、後見制度は本人の生存中のみ機能しますが、信託では、本人の生存中から死亡後まで、財産管理等の内容について、契約で自由・柔軟に設定することができます。
また、後見制度では、生存中の判断能力低下が条件となりますが、信託では、本人が元気で判断能力があるうちから活用することが可能です。
また、通常の遺言では、本人の死後に発生した相続について、財産を承継する者を指定することはできませんが、信託では、契約などで将来相続人が亡くなった後に誰に資産が渡るかまで定めることができます。
このように、信託は、従来の制度では足りないところを補うことができますので、高齢者の財産管理・承継について、ひとつの選択肢として検討する価値はあると思います。
(関口)