相続税対策としての不動産小口化商品
1 不動産小口化商品
先日、FP(ファイナンシャルプランナー)の勉強会で、相続税対策になる不動産小口化商品についての講義を受けてきました。
不動産小口化商品とは、「投資家がお金を出し、不動産のプロが運営・管理を行い、得られた不動産収益を投資家に分配する」仕組みの投資商品です。
これは、平成7年4月に施行された「不動産特定共同事業法」に基づくものです。
同法は、投資家が出資を行い、一定の許可要件を満たした事業者が不動産取引(売買・交換・賃貸借)を行い、収益を投資家に配分する事業を規制し、投資家保護と、不動産特定共同事業の健全な発達を目的とするものです。
バブル時代に不動産の小口化による投資が流行ったのですが、当時は規制する法律がなく、投資家が被害を受けたことから、制定されました。
2 不動産小口化商品のタイプ
不動産小口化商品には「匿名組合型」と「任意組合型」、「賃貸型」の3種類があり、一般に多く利用されているのは匿名組合型ですが、任意組合型が増えています。
匿名組合型とは、各投資家が事業者と匿名組合契約を結び、投資家が組合に金銭を出資し、事業者が保有している不動産の管理・運営を行い、事業者が収益を投資家に分配するものです。
ポイントは、事業者が不動産を所有するところです。したがって、登記されないので、匿名性があり、分配金は不動産所得ではなく雑所得になります。
リートや株と同様に配当利回りを得ることが目的になります。
ここでは、相続税の節税とあまり関係がないので、匿名組合型については、これ以上ご説明しません。
任意組合型とは、投資家と事業者とが任意組合契約を結び、投資家が不動産の共有持ち分を購入し、それを組合に出資し、事業者は組合の代表として不動産の管理・運営を行い、収益を投資家に分配します。
ポイントは所有権(共有持分)が投資家にあることです。したがって分配金は不動産所得になり、相続税の扱いは現物不動産と同じになります。
3 実例とメリット
例えば、都心の優良物件である8億円の物件を、一口100万円で800口用意した商品であれば、優良物件である不動産を100万円という単位で部分的に所有することができ、管理は専門業者にお任せで、その配当を得られることになります。
相続税の評価額は、現金であれば100%ですが、土地であれば路線価、建物なら固定資産税評価額で評価されますので(時価の8~7割といわれています)、それだけ相続税評価額が低くなり、また相続税法上の評価額低減の諸規定(小規模宅地の特例など)が適用されれば、もっと低くなります。
また、贈与税は、贈与額が多額だと、割合も高くなりますが、小口化されているため、贈与を行っても贈与税のかかる割合が低くできます。
小口で分けることができるので、不動産をそのまま所有している状態に比べれば、遺産分割がしやすくなるともいえます。
以上のように、任意組合型の小口化商品は、①相続税評価額を下げ、相続税対策になる、②贈与税を下げ、生前贈与対策になる、③小口なので遺産分割対策になるというメリットがあります。
4 まとめ
以上のように、相続税対策(贈与税対策)としては、使える側面があると思います。
ただ、不動産を所有すること自体のリスク、例えば、不動産価値の減少、相続税法の諸規定の変動、換金性が金銭等に比べれば低いことなどは、認識しておく必要があります。
不動産のプロにすべて委ねるという内容なので、収益が得られることを期待するのが当然ですが、投資なので、失敗した場合のリスクは自分で引き受けなければなりません。
利用する場合は、優良な事業者・商品を選び、契約内容をよく理解しなければならないと思います。
(関口)