2016年6月20日(月)
養子縁組無効確認の訴え
1 養子縁組無効確認
近年,遺言の有効性が争われる事例が多くなっています。
同様に,亡くなる直前に高齢の養親と親族(多くは遺産を増やしたい孫など)との養子縁組が行われ,相続開始後に養子縁組の有効性が争われる事案が増えていると言われています。
養子縁組をして養子という身分を取得すれば,相続人になり,相続分、遺留分にも影響を与えてくることになります。
逆に,他の相続人にとっては相続人が増えるため,逆に相続分が減ることになり,縁組の有効性が争われるきっかけとなります。
2 養子縁組の意思
養子縁組をするには,当事者が役所に対して養子縁組の届出をすればよいのですが,その際,高齢の養親が認知症などに罹患し,判断能力が不十分なまま,縁組届が出される場合があります。
このような場合,養子縁組における「縁組意思」とは何か,という点が問題になります。
裁判例によれば,縁組意思とは,「親子としての精神的なつながりまたは人間関係をつくる意思」といわれています。
これだけでは何のことかわかりませんよね。
実際は,さまざまな事情を考慮して,「親子としての精神的なつながりをつくる意思」の有無を判断します。
判断力が問題となっている場合,考慮される要素としては,養親の年齢がどのていど高齢か,認知症等の病状がどの程度進行しているのか,療養や介護等の生活状況,養子との交流関係,当事者間に親子関係を形成する必要性・養子縁組の必要性の有無,養親の推定相続人に対する影響の有無,紛争発生の回避のための配慮の有無,利害関係者への相談・縁組の公表の有無,養子縁組届出の経緯などが考えられます。
3 注意する点
単純に相続税を減らそうとか,他の相続人の相続分を減らそうなどという目的で,推定相続人が判断力が問題になりそうな高齢の親に対し,養子縁組の届出をさせようとした場合,その養子縁組は無効となる可能性があるので,注意が必要です。
高齢の親との養子縁組を行う場合には,縁組意思をきちんと確かめ,適法に届出を行い,慎重に進めなければなりません。
なお,養子縁組の有効性を争う場合には,家庭裁判所に養子縁組無効確認の訴えを起こします(まず調停を行い,不調なら訴訟となります)。
(関口)