2016年6月13日(月)
遺贈と死因贈与~他人に遺産を渡したい
人が亡くなると,遺産は法定相続人間で分割されます。遺言も法定相続人に対して遺すのが通常でしょう。
しかし,中には相続人には財産を渡したくないとか,お世話になった第三者に遺産をあげたい,慈善団体に寄付したい,などと考える人もいるかと思います。
このように,他人や法人に遺産を与える方法として「遺贈」という制度があります。
遺贈とは,遺産の全部または一部を他人や法人に与えることをいい,遺言でのみすることができます。
遺贈の方法には大きく分けて二種類あり,たとえば「特定の財産(A不動産)を遺贈する」などという特定遺贈と,「遺産の2分の1を遺贈する」などという包括遺贈があります。
このうち,包括遺贈がされた場合,遺贈を受けた人は相続人と同じような立場となり,相続をめぐる紛争に当事者として関与することになります。遺産分割協議にも参加することになります。
また,相続人同様,資産のみならず借金を引き継ぐこともありますので,その場合は相続放棄と同様に遺贈の放棄をすることができます。
なお,遺贈も遺留分を侵害することはできませんので,遺留分減殺請求の対象となります。
このように遺贈することにより,相続人以外の第三者に遺産を与えることできます。では,ほかに方法はないのでしょうか?
もう一つ他人に遺産を与える方法として「死因贈与」というものがあります。
死因贈与とは,贈与する者が死亡することによって効力の生ずる贈与です。死亡によって財産を他人に与えるという意味では,遺贈に似ています。したがって,死因贈与には遺贈に関する規定が準用され,遺留分減殺請求の対象にもなります。
しかし,遺贈は遺言者が遺言によってする一方的な意思表示なのに対し,死因贈与は,贈与を受ける者との合意によって成立する契約であるという違いがあります。
つまり,死因贈与は契約ですから,遺言をする場合のような厳格な規定がなく,書面でも口頭でもすることができます。代理人によってすることもできます。
このように死因贈与は,形式にとらわれずにできるというメリットがあります。
また,双方合意のもと成立するのですから,贈与する人は,贈与したい人に確実に財産を渡すことができるというメリットもあります。遺贈の場合は放棄されるかもしれませんからね。
さらに,遺産を与えるかわりに,「死ぬまで自分の面倒をみること」などの負担をつける負担付死因贈与の場合も,合意に基づくわけですから,その負担につき確実に実行されることが期待できます。
死因贈与には,以上のようなメリットがあります。これらのメリットを受けることを望むのであれば,遺贈ではなく死因贈与も検討してみては?
(小林)