2016年5月16日(月)
遺留分とは?
1 遺留分とは
すべての遺産を一人の相続人に相続させる旨の遺言があったとします。このとき、他の相続人は遺産を全く取得することができないかというと、必ずしもそうとはいえません。なぜなら、法律上、遺留分というものが存在するからです。遺留分とは何かというと、遺言の内容に関係なく、最低限相続できる権利のことです(民法1028条)。ですから、この遺留分を主張して、遺産の一部を取得できる可能性があります。
このような遺留分が認められている人は、被相続人の配偶者、子、直系尊属であり、子の代襲相続人も、被代襲者である子と同じ遺留分を持ちます。注意点としては、兄弟姉妹には遺留分がないということです。
そして、遺留分の割合は、直系尊属のみが相続人であるときは、遺産の3分の1、その他の場合は、遺産の2分の1とされています。
2 具体例
文章だけでご説明してもなかなか理解するのが難しいと思いますので、具体例に沿ってご説明します。
例えば、Aさんという男性が1000万円の遺産を残して亡くなったとします。そして、Aさんには、妻であるBさん、長男であるCさん、長女であるDさんがいたとします。
このとき、長男であるCさんに遺産をすべて相続させる旨の遺言があったとすると、CさんがAさんの遺産をすべて取得し、BさんやDさんは何ら遺産を取得できないことになりそうですが、冒頭でご説明したように、必ずしもそうはなりません。なぜなら、BさんやDさんには、最低限相続できる権利、つまり遺留分があるからです。
では、具体的にどれだけの権利を主張できるかというと、次のように考えます。まず、本件は、直系尊属以外が相続人ですから、遺留分は遺産の2分の1です。そして、法定相続分にこの2分の1を乗じることになります。
したがって、まず、法定相続分を考えますと、配偶者であるBさんが2分の1、子であるDさんが4分の1です(民法900条1号、4号)。次に、これらの法定相続分に2分の1を乗じることになりますから、Bさんが4分の1(=2分の1×2分の1)、Dさんが8分の1(4分の1×2分の1)の遺留分を有しているという計算になります。
よって、簡単にいえば、遺言によって、Cさんが1000万円をすべてを取得するように思えるものの、Bさんは4分の1=250万円を取得する権利があり、Dさんも125万円を取得する権利があるということになります。
もっとも、「簡単にいえば」と留保を付したように、遺留分の計算というのは複雑で、その他の色々な事情も考慮して計算する必要があります。
この記事で、そのすべてをご説明することはできませんが、この記事をきっかけに、遺留分というものが存在するということを知っていただければと思います。
最後に注意点ですが、この遺留分というのは、相続の開始(あるいは遺留分を侵害するような贈与や遺贈のあったこと)を知った時から1年以内に権利行使しなければなりません。ですので、遺留分が侵害されている可能性がありそうであれば、できる限り早めにご相談されることをおすすめします。
(勝本)