2015年6月5日(金)
親の世話をした子どもの寄与分
「私,母親が亡くなるまで,一緒に生活して,世話をしてきたんだけど,私の相続分は増えますか?」
という相談を受けることがあります。
これは法的には「寄与分」が認められるかどうかの問題となります。
「寄与分」とは,特定の相続人が,被相続人の財産の維持,増加に特別の寄与がある場合に,寄与に相当する額を本来の相続分に加える制度です。したがって,「寄与分」が認められれば,相続分は増えることになります。
しかし,「寄与分」が認められるためには,その寄与行為が「特別の寄与」つまり,被相続人と相続人の身分関係に基づいて通常期待されるような程度を超える貢献であることが必要となります。
そうすると,そもそも親子には相互に扶養する義務がありますので,「一緒に生活していた。」「食事の世話をしていた。」「入院した母親のところへ毎日お見舞いに行った。」程度では,扶養義務の範囲内とされ,「寄与分」は認められないと考えられます。
また,「特別の寄与」があったとしても,そのことによって被相続人の財産の維持,増加に役立たなければ,「寄与分」は認められません。したがって,親と同居して,世話を続けた結果,介護施設などに入居せず,多額の入居費用を支払わずに済んだという限定的な場合にのみ「寄与分」が認められる余地があるにすぎないことになります。
冒頭の相談のケースは,比較的多くみられるのですが,以上とおり,「寄与分」が認められるためのハードルが高いのが実情であり,私が相談を受けたケースでも,「寄与分」が認められると思われるケースは残念ながらありませんでした。
ここで話しはころっと変わりますが,先週,3月14日に開業した北陸新幹線に乗りました。その途中駅に,「黒部宇奈月温泉駅」という駅があり,私は「宇奈月温泉事件」という,法律家なら皆知っているであろう事件を思い出しました。「相続・遺言」とは直接関係しませんが,興味のある方は「宇奈月温泉事件」で検索してみてください。
(小林)