2019年6月12日(水)
認知症の画像診断と遺言能力
1 遺言能力鑑定セミナー
画像鑑定の専門医の方が解説してくれる、遺言能力鑑定のセミナーに行ってきました。
これまで、遺言無効確認訴訟など多くの遺言能力や養子縁組能力に関する事件を受任してきました。
殆どは、認知症があり、遺言能力等が怪しい事案なのですが、これを訴訟で立証するには、なかなか簡単には行きません。
裁判では、医療記録はもちろん、看護記録や介護記録なども用いて、具体的に主張・立証しなければならず、いつも苦労しています。
今回は、訴訟の参考にするため、放射線診断専門医の先生の遺言能力鑑定のセミナーに行ってきました。
なお、先生も、画像診断だけでなく、看護記録は重視しているとのことでした。画像には有用なものがいくつかありますが、画像がない場合も多いので、記録だけを頼りに鑑定しなければならないことがままあります。
そのようなときは、医者のメモだけでは不十分で、家族とのやりとり等を細かく記載した看護記録などが参考になります。
2 認知症の診断
認知症の診断については、神経心理学的検査(MMSEや長谷川式)、神経学的検査、画像検査を行います。
画像診断については、CT、MRIが有名です。
SPECT(体内に注入した放射線薬品から放出されるγ線を画像として表示させる)により脳の領域の血流量を色違いで表現し、eZIS(健常者脳の正常脳のデータベースから標準化脳モデルを写したもの)と併せることで、効果的に認知症の診断が可能になりました。
アルツハイマー型認知症の診断については、バイオマーカー診断により、確定的な診断ができるようになったとのことでした。
認知症の疑いがある場合には、画像診断をすることが有用だとわかりました。
診断技術の進歩が認知症の予防や治療につながると良いと思います。
3 まとめ
実際の画像や鑑定書を資料として拝見させていただき、たいへん参考になりました。
画像診断は有用ですが、遺言能力の有無を判断するには、それ以外の状況も重要になる場面が多いので、やはりその判断は困難だと思います。
今後、このような争いができるだけなくなるように、遺言作成の手続きを整備していくなど、工夫を続けていかなければなりません。
(関口)