2018年3月28日(水)
家族信託の機能3・委託者意思による拘束
家族信託の機能3・委託者意思による拘束
家族信託の3つの機能のうち、前々回のブログで(1)信託財産の権限が受託者に移転するという機能、前回のブログで(2)信託財産に対する所有権が受益権という債権に変化するという機能についてご説明しました。
今回は「(3)委託者意思による拘束」です。
1.委託者意思による拘束
信託によって、信託設定時に委託者の意思を長期間にわたり維持させることができます。これにより、委託者の意思能力が喪失し、亡くなっても、信託契約が存続する限り、その意思が貫徹されます。また、当初の信託目的を固定しながら、受益者を変えていくことなどができます。
委託者が自分の所有する財産を、どのように処分するのか、自分の死後にわたって決められるというのは、信託の画期的な機能です。
家族信託を使わない場合、自分の財産は自分の死後に相続人へと相続され、それ以降は、相続人の意思に基づき管理・運用・処分されてしまいます。
2.具体例
具体例に基づいて考えてみましょう。
例えば、夫Aさんが認知症の妻Bさんと二人で自宅に暮らしており、子どもがいないケースで考えます。
このケースで、Aさんが、自分が亡くなった後はBさんに自宅を相続させたいが、Bさんが亡くなった後はAさんの弟であるCさんに自宅を受け継いでもらいたいと考えているとします。
この場合、Bさんに自宅を相続させたいだけであれば、その旨の遺言書を作成すれば、足ります。
しかしながら、Bさんが亡くなった後、Cさんに自宅を相続させることを、Aさん本人の遺言で指定することはできません。なぜなら、遺言では、自分の死亡によって生じる相続(一次相続といいます。)でしか、財産の承継先を指定できないからです。
その結果、Bさんが亡くなった後、Bさんに兄弟姉妹がいる場合、その兄弟姉妹がその自宅を相続することになってしまいますので、Aさんの希望が叶いません。
このようなケースで、家族信託が役立ちます。家族信託を利用すれば、自分の所有する財産を、どのように処分するのか、自分の死後にわたって決めることができるからです。
すなわち、まずはBさんに、Bさんが亡くなった後はCさんに、財産を承継させることができるわけです。
3.注意点
ただし、このことは、メリットである一方でデメリットともなり得るので、注意が必要です。
つまり、長期に渡って財産の処分等に制限をかけることになってしまうため、当事者や環境に変化が生じた場合、かえって相続トラブルや不測の事態を誘発するリスクがあるのです。
したがって、家族信託は、その画期的な機能に着目されがちですが、その利用にあたっては、慎重な配慮が必要です。