2017年1月23日(月)
遺留分と生前贈与
1.遺留分制度について
遺留分制度とは、相続財産の一定の割合について、一定の相続人に対し、その相続を保障する制度です。
例えば、共同相続人のうちの1人にすべての相続財産を相続させるという内容の遺言があったとしても、他の相続人には遺留分がありますので、一定の割合については、分け前をもらうことができます。その割合は、原則として法定相続分の2分の1で、直系尊属しか相続人がいない場合は法定相続分の3分の1になります。
例えば、甲さんが亡くなって、その子どもである乙さんと丙さんが相続人で、他に相続人はいないケースを想定してみましょう。
このケースで、甲さんには遺産として預金3000万円のみがあり、甲さんがすべての遺産を乙さんに相続させるという内容の遺言を残していた場合、3000万円の預金すべてを乙さんが相続することになりそうです。
しかしながら、冒頭で述べたように、丙さんには遺留分というものが存在しますので、一定の割合、遺産から分け前をもらうことができます。遺留分は、法定相続分の2分の1で、相続人が子2人の場合、法定相続分は各々2分の1ずつですから、丙さんは3000万×2分の1×2分の1=750万円の遺留分を有していることになります。
2.遺留分制度と生前贈与について
遺留分がどれぐらいになるかを計算するにあたって注意すべき点としては、、亡くなった方が相続開始時に有していた財産以外であっても、遺留分を算定する基礎となる財産となりうるということです。具体的には、相続開始前1年間になされた贈与、遺留分権利者に損害を与えることを知ってなされた贈与、不相当な対価でなされた有償処分、特別受益としての贈与などが挙げられます。これらは、亡くなった当時には、亡くなった方の財産から逸出してしまっていますが、遺留分を計算するにあたっては意味があるものになります。
具体例として、特別受益としての贈与があった場合について、考えてみましょう。
上記ケースで、甲さんが生前、乙さんに対し、生計の資本として1000万円の贈与をしていたとします。これが特別受益にあたる場合、特段の事情のない限り、この1000万円も遺留分を算定するにあたって考慮すべき財産になるのです。
その結果、預金3000万円に1000万円を加えた4000万円が遺留分算定の基礎となる財産になりますので、丙さんは4000万×2分の1×2分の1=1000万円の遺留分を有していることになるというわけです。
遺留分を計算にするためには、色々と考えなければならないことがありますが、その1つとして上記のことを知っておいていただくと役立つかと思います。
(勝本)