2017年1月10日(火)
限定承認~プラスとマイナスどちらが多いの?
例えば,相続が開始し,あなたを含め複数人が相続人(共同相続人)となりました。
遺産がプラスの財産ばかりであれば,遺産分割協議をして遺産を分配すればいいし,協議がまとまらなければ調停手続きを利用して解決することもできます。
また,マイナスの財産(借金)しか残っていない場合は,「相続放棄」の手続きをすることで,借金から免れることができます。
では,プラスの財産とマイナスの財産が両方あり,どちらが多いのか分からない場合はどうすればいいでしょうか?
もちろん,両方相続することもできます。これを「単純承認」といいます。
ただし,「単純承認」するとプラスの財産もマイナスの財産も無限に承継することになりますので,マイナスの財産があまりに多いと,相続人にとって酷な結果となってしまいます。
このような場合,「限定承認」という方法があります。
「限定承認」とは,「相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して」相続の承認をすることをいいます。
つまり,遺産の中から借金などを弁済してもなおプラスとなる場合に,そのプラス分の遺産を取得するという留保をつけて相続の承認をするというものです。
「限定承認」をすることで,プラスの財産の方が多ければ,その分を取得することができるし,マイナスの財産が多い場合でも,それを背負うことはなくなるので,プラスの財産とマイナスの財産のどちらが多いか分からない場合には有効な方法のように見えます。
しかし,「限定承認」という方法はあまり利用されていないのが現状です。
これは「単純承認」や「相続放棄」と比べると,「限定承認」は手続きがはるかに複雑で,利用しずらい上に,共同相続人全員で手続きを行わなければならないため,共同相続人の一人が「単純承認」や「単純承認とみなしうる行為」(法定単純承認)をしてしまうと,「限定承認」自体ができなくなることが理由として挙げられます。
ただ,「限定承認」は,「遺産は欲しいけど,借金は負いたくない」という場合に有効な割と都合のいい制度とも考えられますので,その分手続きが複雑なのも仕方ないのかもしれませんね。
(小林)